2022年3月10日木曜日

たまには読書も・・・車谷長吉

最近は本を読まないですねえ~。

これはだいぶ前に読んだ本です。


書名 「贋世捨人」(にせよすてびと)
出版  新潮社 2002年

著者  車谷長吉


このブログを読まれている方はほとんど知らない作家だと思いますが、私はなぜか大好きな車谷長吉先生なのですねぇ~(;^ω^)


この小説は車谷長吉(本名:嘉彦)が、いわゆる本格的に作家になることを決意するまでの半生を描いた、自伝的私小説(わたくししょうせつ)で、1998年に「赤目四十八瀧心中未遂」で直木賞を受賞してから、4年後の53歳の時の作品です。

著者の分身である主人公の生島嘉一は、兵庫の有名高校の受験に落ちて、そこよりランクの低い公立高校に入り、劣等感にさいなまれながらも、強烈な上昇志向の高校生活を送ります。
そして慶応義塾大学文学部を受けて合格します。

大学を卒業して広告代理店に入社しその後出版社に転職します。
その間私小説を書き、一部の編集者に認められるも、物を書くことに行き詰まりを感じ苦悩する様子が克明に描かれます。

そして、朝日新聞社の中途採用に応募・合格したもののオイルショックのため内定取り消しになってしまいます。その時30歳。

そのため故郷の兵庫の母親の元に逃げ帰ったが、母親に「あんたは何をやってもあかん、いっそ下足番にでもなれ」という言葉を受けて、ほんとに下足番や料理店の下働きを、全財産が風呂敷に包んだものだけの無一物と共に、関西地方で転々とした生活を8年間続けます。


決して板前になるとか『大将』になることを目指さない、というより拒否した、まさしく世捨人のような生活です。
普通ならそれで人生が見えてしまうのですが、主人公の才能を見出している東京の出版社の編集者が、数度主人公を探し当て東京に戻って作家になることを迫ります。

根負けした主人公は、38歳でまた東京に戻り、小説を書くことを志しますが苦悩の日々は続きます。

これが世捨人の前に贋を付けた所以なんでしょうね。

小説というより車谷長吉の半生そのもののようで、自分(私)の人生にも重なるところが少しあって、他人とは思えなくなってきたものです。



車谷長吉の壮絶な人生を赤裸々に綴っていますが、栄誉ある直木賞を受賞して4年後に書いたのにも驚きます。


その後も多くの私小説を書いていますが、全く自分を飾らなくさらけ出して、人間の3悪(自尊心・虚栄心・劣等感)を徹底的に掘り下げ、淡々と小説を書き続けました。

さらけ出し過ぎて訴訟を起こされたこともありました。


車谷長吉氏は2015年5月17日の朝、69歳で不慮の事故(食べ物をのどに詰まらせて)で亡くなりました。

その時私は定年リタイアの翌年、金沢まで行く新幹線が開通して間もなくの石川県を旅行していて、金沢駅前のアパホテルで配られた新聞📰で知りました。

その時の衝撃は今でも覚えています。

その新聞を何度も読み返して、今も保存してあります。


2015年5月19日の、全国紙の社会面です



わたしは車谷長吉の生き様、思考に共感するものがあり、文体も含めて今でも最も愛する作家のひとりなのです。



今日も読んでいただきましてありがとうございます。



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