著者 佐藤紅緑
校訂 町田久次
出版社 論創社
佐藤紅緑は明治・大正時代の小説家で、この本は大正4年に福島民友新聞に連載された小説を底本にしています。
本の写真がうまく撮れていないですが、私の撮影技術が未熟でして、ご愛嬌で・・・ ^_^;
佐藤紅緑は現在、一般にはあまり知られた小説家ではないと思いますが、のちの昭和2年~3年に雑誌「少年倶楽部」に、「あゝ玉杯に花うけて」という青年小説を発表しています。旧制第一高校の寮歌から題をつけたそうです。
なお詩人のサトーハチローや作家の佐藤愛子の父親ということの方が知られているかも? であります。
この小説は日露戦争前後の、露西亜のペトログラード(現在のサンクトペテルブルグでフィンランドに近い都市です。現在の人口は500万人)と東京が舞台です。
主人公は廃兵院長の吉村(旧姓:林)浪雄と、海軍少佐の吉村次郎(別名:森山)ということになります。
日露戦争の、極東での戦いが吉村少佐を中心として、中盤で描かれており、興味深いです。
そしてこの同姓の2人の人物の関係が、小説の骨子になりますが、内容はここで話すとネタバレになりますので割愛します。
自分たちではほぼどうしようもない、運命のいたずらで、主人公たちが悲劇に翻弄され、最後に吉村
吉村の奥さんも子供も、不幸のどん底にいるはずなのに、それを静かに受け入れているように見えて、読者の涙を誘います。
また挿絵がほぼ1ページおきに描かれているのですが、明治時代らしい味がありますが、作家が不明だそうです。
この小説は明治時代を良く表わしていて、興味深く最後まですっと読んでしまいました。
読んでいただきましてありがとうございます。