2016年10月23日日曜日

秋の夜長、夏目漱石の本を読みました

どうも、団塊定年おじさんです。

今日は夏目漱石、新潮文庫版 「虞美人草」の感想です。




「虞美人草」は漱石が明治40年に、東京帝国大学等の教職をすべて辞し、朝日新聞社に入社し、職業作家として初めての連載作品です。40歳のころです。

当時大学の先生は現在とは比べものにならないくらい社会的地位が高く、尊敬されていたようです。
大学は明治40年当時、全国に3校しかない東京、京都、東北の帝国大学のみです。

逆に新聞記者や、小説家というのは、社会にそれほど認められていない職業であったそうです。
なので、大学の先生を辞めてから職業小説家になるのは大変な決断だったのでしょう。

この小説の登場人物は、おもに20代の若者男女それぞれ3人づつです。 
甲野欽吾27歳   哲学者  
甲野藤尾24歳   欽吾の腹違いの妹・近代的女性
小野清三27歳   文学者・詩人・優柔不断
井上小夜子21歳 小野の恩師の娘・大和なでしこ
宗近一 28歳   外交官志望・顔も体も四角
宗近糸子22歳  一の妹・可愛い娘
 
序盤は、漱石の初期の「坊っちゃん」や「吾輩はネコである」等に比べて、文章にユーモアやキレがなく、美文調で漢文が多く会話以外は読みにくいと感じました。だらだらとした感じですね。

当時新聞を読んでいた人は、インテリが多く教養もあって、このような小説を好んでよく読んでいたのかな?と感心しています。
自分が20代の頃だったら、あまり読む気がしなかったかもしれません。

小野と2人の女性の三角関係を中心に、物語は進んでいく恋愛小説のようですが、それぞれ自我が強く私利私欲もある。
男同士の関係や、明治時代の家督相続、親子関係、もからんで、中盤からは、結構面白くいっきに読んでしまいました。

終盤の藤尾自身の悲劇で、クライマックスですね。
藤尾は悪女なのか。小野は優柔不断な男なのか。
宗近こそが本当の男子だったのか。

やはり、頭のいいこの小説の漱石先生の文章は、「坊っちゃん」等に比べると私のような凡人にはなかなか難しいものがありましたが、読んで面白かったとはいえます。
また、明治・大正時代の都市の様子が、年代によって少しづつ違うのが興味深いです。
これは、他の小説にも言えて、読む楽しみの1つでもあります。

詳しい小説の内容は、ネタバレになりますので書きません。
あしからず。
興味のある方はぜひ一読してはいかがでしょうか。